ITエンジニアはうつ病になる人が多いという話を聞いたことはありませんか?

「ITエンジニアはうつ病になりやすいみたいだけど本当?」
「ITエンジニアになりたいけど、うつ病にはなりたくない…」
「うつ病の原因にはどのようなものがあるの?」
「うつ病にならないようにするにはどうしたらよいの?」

と考えている人もいるかもしれません。

私自身はうつ病にかかったことはありませんが、この業界に入る前に
新卒でITエンジニアに業界に入ったもののうつ病になって3年で辞めた人の話を直接聞いたり、
ネットワークエンジニアをしていた頃、会社の先輩がうつ気味になってしまい、
休職後に配置転換となったということがありました。

直接見知った話以外でも、ネット上などではIT業界でうつ病になってしまった話が数多く存在します。

このように、ITエンジニアはうつ病になりやすい一定の傾向があるといえます。

この記事では、そんなITエンジニアがうつ病になりやすい理由と
うつ病を予防する方法について解説しています。

ITエンジニアがうつ病になりやすい理由

ITエンジニアがうつ病になりやすい理由としては、

  • 長時間労働で十分な休養が取りづらい
  • 生活リズムが不規則になりがちで、自律神経のバランスが乱れやすい
  • 精神的な負担が大きく、慢性的なストレスを感じることが多い

などが考えられます。

このようになってしまう原因としては、

  • システム開発の納期が厳しい
  • 仕様変更で手戻りが発生することがある
  • 仕事量が過剰になりやすい
  • 勤務時間外に障害対応が発生することもある
  • 運用フェーズで夜勤が必要な場合がある
  • 自分が保有するよりもはるかに高いスキルが要求されることもある
  • バグがあると多大なビジネス影響が発生することがある
  • やりがいを感じられないこともある
  • 人間関係に悩まされることもある

などが挙げられます。

1つずつ詳しく解説していきます。

1.システム開発の納期が厳しい

SIerや受託開発企業の場合、プロジェクトの予算が「人員×月数」で決まることが多いため、
顧客にとってはなるべく少ない人員数かなるべく短期間でシステムを完成させてもらう方が
コストを削減できます。

人員を少なくすると完成も遅くなってしまい、システムの稼働が遅れて
機会損失が発生してしまいますので、なるべく納期を短くすることが求められます。

また、PM(プロジェクトマネージャー)などの開発経験が乏しいと正確な工数見積りが難しく、
必要な工数が漏れていたり、実際の工数との乖離が大きくなってしまうことがあります。

このような場合、クライアント側とプロジェクト期間や開発対象の見直しが行われることがありますが、
クライアント側の理解が得られなかったり、予算や期間的に変更が困難な場合は、
そのままプロジェクトが強行されてしまい、納期が非常に厳しくなってしまうことがあります。

納期が厳しいことによって、そのプロジェクトに参画するエンジニアは
残業や徹夜、休日出勤をしてでもシステムを完成させなければならなくなってしまい、
次第に心身共に疲弊してうつ病になってしまうのです。

ただ、IT業界全体でこのように厳しい納期のプロジェクトが行われているわけではなく、
比較的プロジェクトが小規模な自社サービス開発企業の場合は、
ディレクターの判断で納期を伸ばすことが比較的容易なため、
残業や休日出勤がほとんどなく、定時で帰れる現場も存在します。

2.仕様変更で手戻りが発生することがある

IT技術は抽象的で目ではっきりと確認できるものが少ないので、全容を把握しづらいのが特徴です。

このため、クライアントが開発の初期段階で要件をしっかりと固めることは難しく、
設計や開発の途中で仕様の変更が行われることがあります。

全体にあまり影響を及ぼさないような小さな仕様変更であればそれほど問題にはなりませんが、
クライアント側にとっては小さな変更と思えても、実装上は影響が大きいということがあります。

このような場合は、設計や開発自体をやり直さなければならないこともあります。

仕様変更により工数が膨らんでエンジニアの負担が大きくなってしまうことに加え、
手戻りが発生して一度完了したと思った工程をもう一度やり直さなければならないということも
エンジニアにとってストレスになってしまいます。

3.仕事量が過剰になりやすい

昨今ITエンジニアが不足していることもあり、
特に大規模なプロジェクトでは、
十分な数のエンジニアを確保することが難しかったり、
確保したエンジニアのスキルが十分でないことがあります。

このため、スキルが十分でないエンジニアにとっては、
自分の能力以上のタスクが割り振られることで作業に時間が掛かったり、
ミスをしてしまうリスクが高まります。

また、スキルがあるエンジニアにとっては、
スキルの低いエンジニアが担当できないタスクが
多く割り振られることになり、負担が増大します。

人によっては、すでに多くのタスクを抱えていたとしても、
作業の依頼を断れなかったり、作業依頼を断ることで
自分の立場が危うくなることを恐れるあまり、
過剰な仕事量を抱えてしまうということもあります。

仕事量が過剰になることで長時間労働となってしまい、
十分な休養が取れなかったり、慢性的なストレスを感じてしまい、
うつ病になりやすくなってしまうのです。

4.勤務時間外に障害対応が発生することもある

請負契約の場合は瑕疵担保責任がありますので、システム開発が完了したとしても安心はできません。

特に無理な納期や不足する人員、スキルの低いエンジニアによって作られる
システムの完成度は低くなりがちで、バグによる問題が発生すると、
時間帯を問わず障害連絡が来て、復旧作業に追われることになります。

復旧優先となりますので、夜間対応や休日対応は当たり前です。

このように、勤務時間外でも障害が発生すれば対応しなければなりませんので、
夜間や休日でも気が休まらず、精神的に消耗してしまうことがあります。

5.運用フェーズで夜勤が必要な場合がある

開発段階ではたいてい日中帯勤務となるのですが、
サーバーやネットワークなどの監視を行う運用段階で24時間対応となる場合は、
エンジニアが夜勤をしたり、日勤と夜勤を一定の周期で繰り返すことがあります。

このように生活を長期間繰り返していると、次第に生活リズムが不規則になってしまい、
自律神経のバランスが乱れて精神を病んでしまうこともあります。

私はソフトウェアエンジニア(システムエンジニア)になる前はネットワークエンジニアをしており、
勤務していた大手キャリアのシフトでは各チーム毎に有休取得奨励期間が設けられていて、
有休を取得すれば毎月8連休を取得でき、月の勤務時間が140時間未満となるような
現場に配属されていました。

このような一見ホワイトで夢のような勤務環境でも、
日勤と夜勤を繰り返す不規則な生活リズムを続けていたためか、
精神を病んでうつ気味になってしまった先輩エンジニアがいました。

こういう不規則な生活を続けていると、生活のリスムが狂って自律神経が乱れてしまい、
うつ病になってしまうことがあります。

6.自分が保有するよりもはるかに高いスキルが要求されることもある

場合によっては、十分なスキルのエンジニアを確保できず、
スキルがそれほどでもないエンジニアが、要求される技術水準が高く、
高度なスキルが必要とされるプロジェクトに配属させられることがあります。

そのエンジニアが真面目で責任感が強く、他人に頼るのが苦手だと、
システムを完成させられるのか、完成後も問題なく動くのかと強い不安を感じて、
自分を追い込んでしまうことがあります。

また、そのようなプロジェクトで他のエンジニアとの技術レベルの差を見せつけられたり、
ミスを連発したりすると、次第に自己肯定感が下がってしまい、精神的にきつくなってしまいます。

7.バグがあると多大なビジネス影響が発生することがある

大規模なシステムでは、小さなバグが入り込むだけでも多大な損害が発生することがあります。

そのため、責任感が強いエンジニアは、バグを埋め込むまいと気を張ったり、
自分の実装でバグがあったときに必要以上に罪悪感を感じてしまうことがあります。

このように、強いプレッシャーや慢性的なストレスを抱えてしまうことで、
次第に精神的に参ってしまい、うつ病になってしまうこともあります。

8.やりがいを感じられないこともある

大規模開発のプロジェクトに参加していると、自分の担当範囲が限定されていて、
それがどのように動くのか、全体の中でどれほどの価値があるのかわからないことがあります。

また、運用フェーズの場合、作業の難易度はそれほど高くなくても、
業務自体に価値を感じられない、やりがいを感じられないということもあります。

このように、業務に対してやりがいや面白さが感じられない状態が続くと、
自分が何のために業務を行っているのかわからなくなり、
次第にそのような作業を行う自分自身に価値を感じられなくなることで、
精神を病んでしまうことがあります。

9.人間関係に悩まされることもある

前述したとおり、IT業界のシステム開発は過酷なプロジェクトがあり、
それに従事するエンジニアは強いストレスを抱えていることもあります。

そのような現場の人間関係はギスギスしてしまい、嫌味を言われる、嫌がらせを受ける他にも、
わからないことを聞いてもまともに答えてくれない、エンジニア間のコミュニケーションが
十分行われずにプロジェクトがまともに進まなくなるということもあり、
ますますストレスが増大していくことになります。

ITエンジニアがうつ病を予防するには?

1.睡眠をしっかり取る

睡眠不足は仕事の能率を下げるばかりか心身へ悪影響を及ぼし、
うつ病にもなりやすくなるといわれています。

業務量が多いとどうしても残業をしがちで睡眠時間も短くなってしまいますが、
睡眠はストレス解消にも役に立ちますので、週に何度かは早めに帰宅したり、
SNSやゲームをする時間を短くするなどして、早めに就寝するようにしましょう。

2.食事をちゃんと摂る

偏った食事もうつ病のリスクを高めるといわれています。

脳内の神経伝達物質の一種である「セロトニン」が不足すると、
睡眠障害や精神不安定になりやすくなります。

脳内セロトニンを合成するには、食事から必須アミノ酸である
「トリプトファン」を摂取する必要があります。

トリプトファンは大豆製品、乳製品に多く含まれ、
肉や魚も炭水化物とビタミンB6を同時に摂取することで合成が促されます。

このように、偏食をせず、様々な食材をバランスよく摂取することで、
トリプトファンから十分なセロトニンが合成され、うつ病のリスクを低くすることができます。

3.適度な運動をする

適度な運動は気分転換やストレス解消になることが知られていますが、
脳の血流を良くして活性化しすることで、脳内のセロトニンを増やすことがわかっています。

脳内のセロトニンの量が増えることで、うつ病になるリスクを減らすことができます。

4.自分を追い込みすぎない

エンジニア未経験でモダンな自社開発企業に入社した人の中には、
他のハイレベルなエンジニアに引け目に感じて、必要以上に自分を追い込んでしまい、
その結果うつ病になってしまうエンジニアもいるようです。

そのハイレベルなエンジニアも時間を掛けてスキルを磨いてきたのでしょうし、
そのような環境であれば経験の浅いエンジニアが入社してきたぐらいで
プロジェクトが進められなくなることはないでしょうから、
あまり自分を追い込まずに、気長かつ着実にスキルアップしていきましょう。

5.仕事を抱え込みすぎない

仕事の依頼を断れなかったり、依頼を断ることで現場での立場が悪くなると
考えているエンジニアもいるかと思います。

残業をすることによってなんとかこなせているから問題ないと思ってしまうこともあるかもしれませんが、
残業が常態化することで、睡眠時間が少なくなってしまい、うつ病のリスクを高めてしまいます。

仕事を振る側も各エンジニアのタスク量を把握していないだけの可能性がありますので、
自分のタスク量と予想完了時間を提示するなど、うまく状況を説明して
仕事を抱え込みすぎないようにすることが重要です。

6.我慢しない

帰ってやりたいことがあるのに我慢して残業する、眠いのに作業が残っているから帰宅しない、
お腹が空いているのにちゃんと食事を取らずに軽食で済ますなどを繰り返していると、
欲求不満が解消されず、次第に無気力となってうつ病になりやすくなります。

ストレス解消も仕事の一環と考えて、必要なら作業が残っていても早く帰るようにしましょう。

そのようなことさえも許されないようなら、
我慢せずに現場を離れることも検討する必要があります。

7.無理をしない

残業をすることが普通になっていると、
もう少しぐらい頑張っても問題ないように思えるかもしれません。

ですが、そのようなことを繰り返していると、
ある日突然、張り詰めていた糸が切れるように
仕事をする気力がなくなってしまうことになりかねません。

もう少しくらい無理をしても大丈夫という発想は、非常に危険であることを自覚しましょう。

8.完璧を目指さず、適度にさぼる

タスクはすべて一様に重要なわけではなく、中にはそれほど重要ではないタスクもあります。

すべて同じように作業を行っていると集中力が持たず、時間も掛かってしまいますので、
タスクの重要性を見極めて、それほど重要ではないタスクは手を抜き、
重要なタスクは集中して取り組むなどメリハリをつける必要があります。

また、残業をしてでもタスクを消化することが常態化していると、
それが当たり前になってしまって更なるタスクを振られかねませんので、
タイミングを見計らって早く帰るなどうまく立ち回る必要があります。

9.必要なら早めに休職する

もし、会社で休職制度が用意されているのであれば、
それを利用して心身を休めることも時には必要です。

ですが、休職制度を利用するには精神科や心療内科の診断書が必要で、
うつ病を予防するために休職することはできないことが多いでしょう。

また、休職制度を利用することが、人事考課に影響を与えることもあります。

このような場合は、退職を検討する必要があるかもしれません。

10.辞めても問題ない状況をつくっておく

現場である程度わがままに振る舞うには、
自分が辞めても問題ない状況をつくっておくと良いです。

具体的には、ある程度の貯金を用意しておく、
他の現場でも通用するスキルを身につけておく、
転職エージェントやフリーランスエージェントに登録して
いつでも転職、フリーランスになれるようにしておくなどが考えられます。

このような状態であれば、現場で何か不都合なことがあれば辞めればよい
という発想になれるので、かえって精神的に気楽でいられます。

また、実際に問題が発生したときには迷いなく、現場や会社を辞めることができます。

11.転職する

もし、今の現場がSIerや受託開発企業などであれば、
Web系の自社サービス開発企業に転職することで、事態が好転することもあります。

特に自社サービス開発企業のプロジェクトであれば、納期は会社側でコントロールできますし、
ユーザーの声が届きやすく、比較的やりがいを感じやすいといえます。

将来的に転職を考えている場合は、早めにレバテックキャリアなどの
転職エージェントに登録しておくことで、何かあったときにすぐに行動できます。

12.フリーランスエンジニアになる

転職する以外に現場を変える方法としては、フリーランスエンジニアになることもオススメです。

フリーランスエンジニアであれば案件は選び放題ですし、単価も高いことが多いです。

人によっては、半年働いて1ヶ月休むといったことをしているエンジニアもいますし、
契約次第では、週2、3日勤務やリモートワークなども可能です。

こうすることで、よりストレスが少ない働き方を実現することができます。

以下の記事で、フリーランスエンジニアのメリットとデメリットについて解説していますので、
ご興味がある方は参考にしてみてください。

記事:フリーランスエンジニアのメリットとデメリット【経験者が詳しく解説】

最後に

いかがだったでしょうか?

ITエンジニアがうつ病になりやすい理由とうつ病を予防する方法について
お分かりいただけたかと思います。

現場やプロジェクトの種類によってうつ病になりやすい、なりにくいということがありますので、
自分のいるところがうつ病になりやすい現場だった場合は、環境を変えてみると案外カンタンに
状況が改善するということもあります。

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