ITエンジニア未経験でSES企業に入社し、一人で客先常駐させられていることはありませんか?

あるいは、

「エンジニアが自分1人だけで、誰にも相談できない…」
「一人だとまともな開発ができずにスキルアップできない」
「わからないことがあったときに、一人だと作業が進まなくなる…」
「一人だと孤独だし、周りのプロパー社員に気を使う…」
「一人客先常駐って法的に問題ないの?」

と悩まれたり、疑問に思うこともあるかもしれません。

この記事では、SES契約による一人客先常駐の問題点と、
IT業界でそれが行われる理由について解説していきます。

SES契約による一人客先常駐の3つの問題【早めに環境を変えよう】

もしあなたがまだエンジニアとしての経験が浅く、
これからスキルアップしていきたいのであれば、
一人で客先常駐させられることはなるべく避けなければなりません。

というのも、一人での客先常駐には、

  • まともな実務経験を積めず、スキルアップしにくい
  • 精神的、肉体的に辛くなって仕事を続けられなくなる恐れがある
  • 偽装請負や二重派遣と見なされる可能性が高い

という問題があるからです。

SES契約については、以下の記事で解説しています。

記事:SES会社に転職するメリットとデメリットとは?【案件決めるコツ】

一人客先常駐の問題点について、一つずつ解説していきます。

1.まともな実務経験を積めず、スキルアップしにくい

ITエンジニアとしての市場価値を上げるには、様々な業務を担当できる環境で実務経験を積み、
自分が行える業務の幅を広げてスキルアップしていく必要があります。

それを効率的に行っていくには、新規開発案件に多く参加して設計や開発の経験を積むことに加え、
他のエンジニアからレビューを受けることによって自分の知識や技術を高めていくことが必要です。

そのような新規開発案件は大抵多くのエンジニアが参加することになるのですが、
一人客先常駐の場合は新規開発ではなくテストや運用保守に関わることが多く、
場合によっては雑用や単純作業ということもあります。

このように、開発業務に関わることが少なくなってしまうと、
スキルアップするには非常に不利になってしまいます。

また、SES契約では現場に指揮命令権がないため、一人で客先常駐している場合は、
現場の誰かから具体的な指示を受けて作業を行うことができず、
すべてを自分で考えて行動する必要があります。

ある程度の実務経験のあるエンジニアであれば、
それまでの知識と経験を生かして対応することが可能ですが、
それらのない新人エンジニアの場合は業務の遂行すらままならず、
スキルアップどころではなくなってしまうことがあります。

2.精神的、肉体的に辛くなって仕事を続けられなくなる恐れがある

人によっては、プロパー社員との待遇の違いから疎外感や孤独感を感じたり、
周囲に気を使って精神を消耗してしまうことがあります。

また、SES契約で派遣されるエンジニアはある程度スキルを持っていると見なされ、
他のプロパー社員に技術的な知識がないということもあるため、
特に新人エンジニアの場合は業務での不明点を誰にも聞けずに作業が進まなくなり、
次第に残業や休日出勤が増えるなどして疲労が溜まっていくことがあります。

他のエンジニアに確認やレビューをしてもらうということもほとんどありませんので、
何らかのバグの改修や機能の追加をしても本当にそのやり方でよいのか迷ったり、
責任の重さから強いストレスを感じたり、問題が発生したときに叱責されてしまうこともあるでしょう。

自社の営業などに相談しても、理解されずに軽くあしらわれたり、
無視されたりして次第にどうしようもなくなり、追い詰められていきます。

そうすると、だんだんと業務を行うのが肉体的、精神的にしんどくなり、
心身に異常をきたすことによって、仕事が続けられなくなってしまうこともあるのです。

3.偽装請負や二重派遣と見なされる可能性が高い

SES契約は派遣先の指揮命令権がない点で派遣契約と異なっており、
現場の指示を受けてしまうと実際の契約がどうかに関わらず、
実質的な労働者派遣と判断されて、偽装請負や二重派遣と見なされてしまうことがあります。

特に常駐先のプロパー社員が契約や法的な知識に乏しい場合や、
現場に派遣契約のエンジニアとSES契約のエンジニアが混ざっていて、
どのエンジニアがどの契約なのかを把握しきれていない場合、
SES契約のエンジニアに対しても指示を出してしまっていることがよくあります。

本来はこのようなことがないように常駐先に複数のエンジニアを送り込み、
一人を現場責任者としてその人から直接指示を受ける形にすることが多いのですが、
会社側の事情でそれが行われずに、現場のプロパー社員から直接指示を受けてしまうと、
偽装請負や二重派遣と見なされるリスクが高くなります。

このような問題は、労災事故や会社に対する刑事告訴などがあったときに発覚することが多く、
実際に法律違反で摘発されて罰則を受けると、会社が取引停止されることで売上が減少したり、
場合によっては廃業したりして、エンジニア本人の雇用まで危うくなることもあるので注意が必要です。

SES契約による一人客先常駐が行われる理由

では、なぜそのようなSES契約による一人客先常駐が行われているのでしょうか。

それは、以下の理由が挙げられます。

  • IT業界の深刻なエンジニア不足
  • SES事業の開業が容易
  • SES案件の獲得が容易
  • SES事業のリスクが小さい
  • 一人だけでも常駐させれば売上や利益になる

1つずつ解説していきます。

1.IT業界の深刻なエンジニア不足

IT業界は深刻なエンジニア不足に見舞われており、
2015年時点ですでに約17万が不足し、
2030年には約59万人が不足すると予想されています。

つまり、IT業界全体として非常に大きいエンジニア需要が存在するので、
開業しやすいSES会社が数多く設立され、エンジニアが派遣されています。

その際、派遣できるエンジニアが少なかったり、
同じ現場で一人分の案件しか確保できないと、一人客先常駐となってしまいます。

2.SES事業の開業が容易

労働者派遣事業を行うにはいくつかの許可要件があり、
その中でも「許可申請事業主に関する財産的基礎」という
要件を満たすことが、開業したばかりの会社には難しいようです。

その要件を具体的に挙げると、

  • 基準資産額(※)が2,000万円×事業所数以上
  • 基準資産額が負債総額の7分の1以上
  • 自己名義の現金・預金額が1,500万円×事業所数以上

などがあります。

※基準資産額とは、繰延資産と営業権を除いた資産総額から負債総額を引いた額のことです。

一方、準委任契約の一種であるSES契約であれば、このような要件はなく簡単に事業を始められます。

3.SES案件の獲得が容易

派遣契約だと二重派遣が禁止されているため、
エンジニアを求める企業に直接営業して案件を獲得する必要があります。

ですが、SES契約であればこのような多重契約に制限がないため、
SES企業間で案件の融通が行われています。

このため、事業を始めたばかりで営業力がなかったり、
営業を行う余裕がなくても簡単に案件を獲得できます。

このような案件に自社のエンジニアに割り当てることで、容易に売上を上げることができます。

4.SES事業のリスクが小さい

SES契約は準委任契約なので、請負契約と異なり完成責任と瑕疵担保責任がありません。

ですので、自社のエンジニアのスキルが十分でなく、
常駐先でプログラムを完成させられなかったり、バグがあったとしても、
善管注意義務さえ果たしていれば問題になることはありません。

※善管注意義務とは、業務を委任された人の職業的、専門的能力や
 社会的地位などから期待される注意義務のことです。

5.一人だけでも常駐させれば売上や利益になる

SES事業を開始したばかりの会社はまだそれほど多くのエンジニアを確保できていませんので、
同じ現場に複数のエンジニアを送り出すことが難しいのが現状です。

また、開業したばかりでないSES企業にとっても、
仮に一人の案件でも常駐させてしまった方が売上や利益になります。

このようにコンプライアンス意識が低い、売上や利益優先のSES企業があるため、
SES契約による一人客先常駐が行われることがあるのです。

最後に

いかがだったでしょうか?

SES契約による一人客先常駐の問題や、そのようなことが
行われてしまう理由についてお分かりいただけたかと思います。

特に、交渉力の低いSES企業が獲得するのは、
他のエンジニアから不人気の案件だったりしますので、
そのような案件をいくら続けてもスキルアップにはつながらないでしょう。

ですので、このようにエンジニアを無視、軽視するようなSES企業は早めに辞める方が良いと思います。

以下の記事で、ITエンジニアが仕事を辞めたくなったときに
どう行動すればよいのかを解説していますので、ご興味がある方は参考にしてみてください。

記事:ITエンジニアが仕事を辞めたい12の理由と取るべき6の行動とは?

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